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多度神社本殿

    多度神社は天正元年 (1573) 9月29日 1) 伊勢国 (三重県) 桑名郡多度村に 鎮座する多度神社を勧請 2) し、美濃国土岐郡多治見 (岐阜県多治見市) 脇之島郷 3) 、下之洞郷 4) の 産土神 5) として奉祀 6) したと伝えられている。 御祭神は天津彦根命7) (天照大御神8)の男神5柱の第3番目の御子神) である。 棟札によれば、創建以来、元禄元年(1688)、 宝永3年(1706)、享保5年(1720)、寛保2年(1742)、寛延4年(1751)、明和3年(1766) に屋根の葺き替え、 寛政3年(1791)に本殿の修理が行われた後、文化元年(1804) に屋根の葺き替えが行われ、天保12年(1841) 9)の本殿再建に 至っている。 本殿の再建は脇之島郷と下之洞郷が施主として行われ、大工棟梁は可児郡池田町屋村(現多治見市池田町)の野村専右衛門、 ふきは尾州宮辻花の伊藤喜三郎である。野村専右衛門は、長福寺中門10)や奥蔵寺観音堂 11)、 神留寺庫裡12)などの再建にも携わっている。 この本殿は一間社流造13)の檜皮葺で、昭和35年に再建された拝殿と わた殿どの でつながっている。 彫刻は向拝虹梁14)より上と本屋頭貫15)に施され、手挟み16)には「波」、向拝と本屋を繋ぐ海老虹梁には 「龍と雲」、中備え17)には「波に飛龍」などがある。また、向拝の木鼻18)の象や獅子、中備えの龍など 多治見市有形文化財 「廿原神明神社本殿」 と 共通する部分もみられる。 再建後は、明治6年(1873)、 明治33年(1900)に屋根の葺き替え、昭和5年(1930)に屋根修理、 昭和10年 (1935)、 昭和52年 (1977) に屋根の 葺き替えが実施されている。


    [参考文献]     麓和善 2012 『多治見市文化財保護センター研究紀要第11号 多治見市有形文化財廿原神明神社本殿保存修理工事報告書』 多治見市教育委員会

  1. 天正元年 (1573) 9月29日 : 元亀4年7月28日(1573年8月25日) 戦乱などの災異のため室町幕府第15代将軍足利義昭を京都から 追放した織田信長が、年号を天正に改元させた。同年8月には信長は越前国守護職朝倉義景を越前に攻めて一乗谷城の戦い [福井市] で 自殺に追いやり、9月には あざながまさ を近江だに 城 (滋賀県長浜市) に攻め滅ぼしている。 浅井長政は信長の妹市との間に茶々、初、江の浅井3姉妹がいる。
  2. かんじょう : 神仏の分身、分霊を他の地に移してまつること。
  3. 脇之島郷 : 現多治見市平和町
  4. 下之洞郷 : 現多治見市京町
  5. うぶすなかみ : 人の生まれた土地の守護神
  6. ほう : 神仏・祖霊などをまつること。
  7. あまひこねのみこと : これは日本書紀による表記で、 古事記では「天津日子根命」と表記。
  8. あまてらすおおかみ : 日本神話に主神として登場する女神。 太陽神、農耕神、機織神など多様な神格を持つ。天岩戸の神隠れで有名な神で、 神社としては三重県伊勢市にある伊勢神宮内宮が特に有名。「古事記」においては天照大御神、 「日本書紀」においてはあまてらすおおかみと表記される。
  9. 天保12年(1841) : 天保年間には全国的な凶作による米価・物価高騰や天保の大飢饉、百姓一揆や都市への避難民流入による 打ち壊しが起こっており、大坂での大塩平八郎の乱、阿片戦争やモリソン号事件など幕政を揺るがす事件が発生していた。 天保12年(1841)には老中首座の水野忠邦が貨幣経済の発達に伴ってひっぱくした 幕府財政の再興を目的とした天保の改革が開始された。
  10. 長福寺 : 真言宗智山派、岐阜県多治見市弁天町1丁目16
  11. 奥蔵寺 : 臨済宗南禅寺派、岐阜県多治見市上野町5丁目75
  12. じんりゅう : 真言宗醍醐派、岐阜県可児市下切797-1
  13. いっけんしゃながれづくり : 神社本殿形式の一つ。正面のはしらが一間のもの。 流造は屋根の前のほうが長く伸びてこうはい(建物の前面に屋根を突き出した部分) をおおい, ひさしと母屋が同じ流れでいてある。 現在、国宝または重要文化財に指定されている本殿の半数を超える。
  14. こうはいこうりょう : 向拝は 神社の正面で、屋根を前に張り出した場所。 虹梁は中央が反り上がって弧状なはり。海老虹梁は海老のように湾曲した虹梁で側柱と本柱など、 高低差のある所に用いられている。
  15. ほんおくかしらぬき : 本屋は建物の主な部分。 頭貫は柱の一番上に用いられる貫 (柱等の垂直材間に通す水平材)。
  16. ばさみ : 向拝柱のきょう (主に柱上にあって、深い軒を支えるしくみ。 ます  [肘木を受けるもの] と ひじ  [軒を支える横木] とを組み合わせたもの)とたる [棟木から桁にかけて、斜めに取り付けられる部材] との間に取り付けられた板。 宮彫りやくりかた [刳ってあけた穴] などの装飾が施される。
  17. なかぞなえ : 柱上の斗栱と斗栱の間にかかる重量を支えるため、その中間に置かれ、柱間を飾るもの。
  18. ばな : かしらぬき が柱から突き出た部分。

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